Female Employees

粗圧延機リフレッシュ計画

世界最新鋭の設備を導入し、
モノづくりを次代に継なぐ。

2016年、夏。日鉄ステンレス光製造所棒線工場で、世界最新鋭のH-Vコンパクト圧延機と電動機(モーター)が本格的に稼働を開始した。長い歳月と13億円強の予算を投じて遂行され、経済新聞や業界紙にも取り上げられた本プロジェクトの裏には、担当エンジニアたちの様々な想いと苦労があった。

研究

高野 光司

研究センター
厚板・棒線材料研究部
部長
1991年入社/材料開発工学科 修了

研究

東城 雅之

厚板・棒線材料研究部
主幹研究員
2010年入社/物性工学 修了

操業

森田 博樹

製造本部 山口製造所光エリア
棒線工場 棒線技術室
2014年入社/機械システムデザイン工学 修了

設備

田島 直貴

製造本部 山口製造所光エリア
棒線工場 棒線技術室
主幹
2011年入社/機械科学科

Q:プロジェクトが開始された発端を教えてください。

森田:もともと、今回の新設備が導入される以前の粗圧延機が設置されたのは、今から約54年前。半世紀以上も前の設備に改良と修繕を重ねてこれまで製造を続けてきたのですが、いくつかの問題が発生していました。例えば、しわ傷や摺動傷などが製品に発生したり、製造難易度の高い鋼種の中では製造ができない製品もありました。

田島:設備的には特にモーターに寿命が来ていたため、リニューアルが必要でした。それならば、粗圧延機自体もこのタイミングでリニューアルしようと設備チーム、操業チームの両方から声が挙がったんです。

高野:現状の設備が老朽化しているのは明白でしたが、新設備の仕様を検討するにあたって、まず現状の不具合がなぜ起こっているかを解析することが必要でした。解析では新日鐵住金の研究チームにも協力を要請しました。

東城:そうして研究チームで解析を進めていく中、圧延をする際に鋼材を水平・垂直に方向転換する際のひねりによって、負荷がかかり、傷が発生することを突き止めたのです。

Q:プロジェクトの際、特に大変だった点を教えてください。

森田:私がプロジェクトに参加したのは、まだ「新入社員」の腕章をつけていた入社1年目の時のこと。当時はとにかく知識も経験も足りませんでした…。操業部門だけでなく、関係部署の方々にたくさんのアドバイスをいただきながら、計画を進めていったのを覚えています。すべてが大変でしたね(笑)。

田島:たしかに森田さんはまだ1年目でしたね。若くして大きな責任と裁量を任せるのは、ある意味、日鉄ステンレスの社風かもしれませんね。設備チームで苦労したこととして思い出されるのは、設備メーカーとの仕様調整でしょうか。国内外の設備メーカーに要望を打診し、見積もりを取ったり、協議を進める中で最終的に海外メーカーに依頼をすることになったのですが、そこには言葉の壁がありました。日鉄ステンレスが望む仕様、コンセプトに落とし込む際にズレや納期的な調整に苦心しましたね。例えば、本当は配管が必要な箇所に配管がなかったり…。海外メーカーや技術商社と打ち合わせを重ねたり、国内の配管メーカーなどにも緊急手配をかけたりしながら、設計・開発をオーガナイズしていく必要がありました。

東城:研究チームとしては、いかに圧延機を高温に保つかの検証実験ですね。熱間圧延機のため、高温状態にすることで加工できる幅が広がるため、最終的にヒーターを導入したのですが、どれぐらい高温にする必要があるかを検討しました。性能が上がれば、予算も上がりますからね。ラボや実機で必要レベルを探り、操業チームと相談しながら、見積もりをとっていきました。

田島:仕様が決定し、開発が完了したあとは、いかに新設備を工場に据え付けるか…。着工期間としては50日程度が必要でしが、その計画にも知恵を絞りました。

森田:ステンレス鋼を製造するメーカーは、日本には数社しかありません。日鉄ステンレスが50日もの間、製造をストップさせれば、日本の社会や産業に対して影響は甚大なものになりますからね。操業と設備部門で協議を続け、最終的に導き出した結論は、工期を3回に分けること。春、秋、そして翌年の春と3回に分けて工事をすることで現在の生産ラインを稼働させながら、着工を進めることができました。

田島:現ラインと設置工事区の間には、高さ6mもの壁を設け、安全にも配慮。通常操業と並行させつつ、無事故で完工できました。

Q:設備導入後の感想、今後の抱負を教えてください。

森田:ステンレス鋼が新設備から初めて射出された際、「どうだ!」という気持ちになりましたね。これまでの苦労を思い出し、感動がこみ上げてきました。実際、従来の鋼種で発生していた傷も抑制され、品質は大幅に改善されましたし、操業部門としてはたしかな手応えを感じています。

田島:まずは、ようやくスタートした、という感じですよね。今後、導入した設備の性能を引き上げ、何十年と維持していくためにやるべきことは山積みです。メンテナンス体制の充実のために、国内メーカーの選定も進めていますね。

東城:この設備が導入されたことで、高付加価値の新しい鋼種が作れるようになる。その研究・開発をこれから楽しんでいけたらと思いますね。

高野:今回、半世紀前の設備が世界最新のものにリフレッシュしましたが、日鉄ステンレスのモノづくりは、これからも綿々と続いていく…。新しい世代、今の若い技術者のために、私たちは技術を継承し、そして彼らが存分に活躍できる環境を作っていきたいですね。それが、日鉄ステンレスのモノづくりであり、人づくりだと考えています。

自分で考えたものを、世の中に出していきたい
Read More

工場見学で世界トップの技術を見た
Read More

産休や育休などの制度
Read More

新鋼種「NSSC 2120®」開発計画
Read More

粗圧延機リフレッシュ計画
Read More