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2024.04.04

当社独自二相ステンレス鋼SUS821L1を用いた立野ダムが完成

日鉄ステンレス株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:井上 昭彦)の省合金二相ステンレス鋼SUS821L1(NSSC 2120® 21%Cr-2%Ni-N)厚板を放流設備に用いた立野ダムが完成しました。

熊本市中心部を流れる白川水系流域は、全国平均に比べ降水量が多いことに加え、中流域の勾配が急である等の地形的特性により大規模な洪水被害が発生してきたことから、長年にわたり治水対策が望まれてきました。洪水調節を目的に建設された立野ダムは、白川上流の阿蘇カルデラの西側に位置し、平常時には河川の流れにしたがって流水し、洪水時には一時的に貯水することで下流沿川の洪水被害を軽減する流水型ダムとして、1969年に予備調査を開始、2018年に本体着工し、本年3月末に完成に至りました。

ダム本体には、洪水時の流量調整や流木・石の捕捉のため、放流管、減勢工整流板、放流ゲート・スクリーン等の多くの設備が設置されていますが、これら設備は激しい水流や岩石等の衝撃に晒されるため、高い強度と耐摩耗性が求められます。当初これら設備の素材として、汎用オーステナイト系ステンレス鋼SUS304の採用が検討されていましたが、高強度特性(SUS304比約2倍)による薄手化・軽量化が工事費用の大幅な低減を可能とすることや、優れた耐食性とその高い耐摩耗性から設備の長寿命化が可能となること等が評価され、約1,400トンのSUS821L1が採用されました。これはSUS821L1を使用した単一の物件としては過去最大量となります。

近年の地球温暖化による豪雨・土砂災害の増加に伴い、国土強靭化計画の一環として流水型ダムの建設が全国で検討されており、今回の立野ダムへの採用を契機に、高い強度と耐摩耗性を兼ね備えた二相ステンレス鋼の適用が、今後さらに広がることが期待されます。

当社は日本製鉄グループのステンレス鋼事業として、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)にも合致した活動(「11. 住み続けられるまちづくりを」、「13. 気候変動に具体的な対策を」)を通じて、これからも社会の発展に貢献していきます。

【物件情報】

発注者 国土交通省 九州地方整備局
工事名 立野ダム常用洪水吐放流管製作据付工事
立野ダム減勢工整流板製作据付工事
立野ダム水位低下用放流設備工事
立野ダム試験湛水用ゲート製作据付工事
受注者 株式会社IHIインフラ建設
豊国工業株式会社
使用鋼材 SUS821L1(NSSC 2120® 21%Cr-2%Ni-N)ステンレス厚板 約1,400トン
写真1. ダム上流側
写真2. 放流設備(スクリーン・放流管)
写真3. 放流管

以上

(お問い合わせ先)

厚板営業部 03-6841-5086